見立物は、当初から手水鉢として作られたもの以外のあらゆる石造品を利用して、それに水穴を掘り手水鉢に流用したものです。 大きく分けると、石造品の一部を用いたものと、全体を使ったものがあり実例からは圧倒的に前者が多いが、石臼・護摩鉢等をそのまま使うような後者の例もある。 石造品の中でも、古来より見立物として最も好まれたのは、仏教遺品としての石塔類であった。手水鉢は社寺以外では、茶の湯が成立した桃山時代に、その露地に取り入れられたのであるが、茶の湯は仏教、特に禅の精神を根底としていたから、、廃物になった仏教の石塔を生かして使用することが好まれた。 石塔類の中でも、特別愛好されたのが鎌倉時代頃の名品の細部であり、特に、宝塔・五輪塔・宝篋印塔・層塔、という4種の石塔の利用は群を抜いている。これらの石塔は、いずれも、塔身・笠・基礎の部分が手水鉢に使われ、中でも塔身は、仏の座所としての塔の本体でもあり古来より最も尊重され、それを用いた手水鉢も塔身形とはいわず、下記のような名称が付けられている。
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見立物手水鉢の種類
(各手水鉢の名称をクリックすると参考写真が見られます。)
袈裟形 | 宝塔「の塔身を用いたもの。塔身は円形で上部が細くなり、これを首といい首の下に建築の長押形、側面には扉形を彫ったものが多く、その模様が僧侶の袈裟に似ていることから袈裟形という。ただし、この模様のない無地の塔身もあり同じく袈裟形という。創作形にも同じ名称がある。 |
鉄鉢形 | 五輪塔の塔身を用いたもの。この塔は五つの部分からなり、下から、地・水・火・風・空を表す。塔身は下から二番目で水を象徴した球形をし、これを水輪という。その形状が禅僧等が托鉢に使う鉄鉢に似ていることから鉄鉢形という。創作形にも同じ名称がある。 |
四方仏形 | 宝篋印塔や層塔の塔身を用いたものであるが、若干、層塔の塔身の方が背が高い傾向がある。塔身の四面に仏像が彫られていることから、通常は四方仏と呼んでいるが仏像の他に梵字を彫った「梵字四方仏」もある。創作形にも同じ名称がある。 |
笠 形 | 石塔類の笠部を用いたもの。宝塔・五輪塔・宝篋印塔・層塔の他に石燈籠・笠塔婆・石幢等の笠も使われる。 |
基礎形 | 石塔類の基礎に水穴を掘ったもの。中でも上部に蓮弁反花があるものが好まれ、特に宝篋印塔や石燈籠の基礎は優れた手水鉢となっているものが多い。 |
礎石形 | 古建築の柱の下に用いる礎石を手水鉢に用いたもので、特に寺院に用いた礎石を伽藍石といい、それに水穴を掘ったものを「伽藍石手水鉢」と称し、また、禅宗様建築の礎石を用いた物を「礎盤形手水鉢」という。特殊なものとして鳥居の礎石を利用したものもある。 |
橋杭形 | 円柱形の石橋の橋脚を用いたもので、立手水鉢として古くから使われている。特に京都の五条大橋や三条大橋等の橋脚は価値の高いものとされている。 |
蓮台形 | 石仏や供養塔などの台座となっている蓮華台を用いたもの。 |
臼 形 | 石臼には「搗き臼」と挽き臼」があり手水鉢に利用されるのは搗き臼の方が多い。 |
資料引用 : 「解説: (株)グラフィック社 発行 吉河 功著 手水鉢 庭園美の造形より」
「解説: 京都府造園組合 監修 西村建依著 造園入門講座 造園材料より」
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