「見る・見られる」関係のなかで発揮される力量

 出展作品はそれぞれに単体の空間を構成しながら、全体としては回遊式庭園の様式をそなえているのが、この作品展の特徴です。杉皮茸きの門をくぐり、玄関脇の石畳を抜けて、中庭へ誘うように園路は延びています。中庭の散策を楽しんだあと、坪庭のある建物の奥へと誘う演出です。
 従来は、画一的なスペースに出展者たちが思い思いのテーマで作庭していましたが、今回の作品はそれぞれに明確なテーマと役割をもっています。園路沿いにちりばめられた12の庭は、門から玄関へとつづくアプローチ空間、緑側から眺める坪庭、マンションのベランダを想定した小さな庭や、ガーデニングの楽しみを取り入れた花の庭、緑側から眺める坪庭、石組みや築山などの作庭技法を集約した日本的な庭など、建物との関係のなかでの具体的な場面を想定して作庭されています。
 全体を一つの大きな庭に見立てたこの構成は、作庭者たちにとっても新鮮な試みだったといえるでしょう。一般的な住まいの庭は壁や建物で囲まれていますから、庭に注がれる視線は一方向に限られることが多いのですが、ここでわ、ときには隣の庭越しに、あるいは中央の池越しに裏側からも見られることも意識しなければなりません。「見る・見られる」関係のなかで、つくり手たちの想像力や空間を構成する力が発揮されます。それが、この作品展の「見どころ」ともいえるでしょう。
 梅小路公園と京都市都市緑化協会の誕生10年を記念して企画された今回の作品は、約2年にわたって開催されます。草花や木々の成長とともに変化する庭の表情もお楽しみください。
吉田昌弘さん(株式会社空間創研代表)